翻訳とポストエディットのISO:お客様を安心させられる翻訳品質の新国際規格

ポストエディットの品質

翻訳やポストエディットに国際規格が存在するって、知っていますか?

翻訳の規格は ISO 17100、ポストエディットの規格は ISO 18587 です。

ISOについて知っておくと、翻訳で品質を保つために有効な翻訳の手順・フローが分かります。認証に通っている翻訳会社は、これまで取引がなくても、一定以上の品質を期待できると信頼できます。

それに、翻訳業界に身をおいていると、いざ取引先や他部署の人に聞かれたとき、「知りません。」とは言いにくいですよね。

ISO 17100 では、翻訳および翻訳の前後に行うフロー、そして翻訳者に求められる能力が明記されています。一方 ISO 185887 では、主にフルポストエディットの作業内容・品質、そしてポストエディターに求められる能力が記されています。

内容を紹介していきますね。

ISO 17100 翻訳の国際規格

翻訳のISOは約3年の検討機関を経て、2015年5月に発行されました。

こういった規格が作られた背景として、ISO9001の存在もあるようです。

ISO9001は、品質に関する規格で、「一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上するための品質マネジメントシステム」についての要求事項が定められています。

ほかに品質を担保するための規格がなかったため、翻訳会社にとってのクライアント企業の中には、この品質規格の順守を求める会社もあったようです。ですが翻訳は工場で機械が生産するものではないため、翻訳業を普通の製造業と同じ枠にはめるのは無理があります。

ISO 17100 は翻訳業専門の規格として、翻訳のプロセスを明記しています。

引用元:日本規格協会 審査登録事業部:ISO17100:翻訳サービス提供者認証のご案内

 

「翻訳」の部分では、翻訳のあとのセルフチェックも求められます。翻訳後の「チェック(必須)」は、バイリンガルチェック、原文と訳文をつきあわせてのチェックです。ここから先のチェックは任意をされています。

制作前・制作・制作後のプロセスがしっかり定められていますね。いいかげんな翻訳サービスを提供している会社では、とても順守できないフローです。この規格が施行されて以来 認定を受ける翻訳会社は増え、現在35の組織*が認定を受けています。

*認証組織はこちら

 

さて、ISO17100には、翻訳のプロセスのほかに、翻訳者に求められる能力についても定めています。翻訳者は、つぎの3つのうち、どれかを満たす必要があります。

① 翻訳の学位
② 翻訳の学位と2年の専業翻訳経験
③ 5年の専業翻訳経験

翻訳業はわりと参入障壁が低いビジネスのひとつです。

そのため安価なサービスを提供する翻訳会社もあります。こういった規格ができたことで、アマチュアとプロフェッショナルの間にしっかりと線が引かれたように思います。

ISO 18587 ポストエディットの国際規格

ポストエディットに関する規格はISO 17100とは別に検討されることが決められ、策定が進められました。これが ISO 18587です。ISO 18587は、2017年7月にリリースされました。

ISO 18587には、主にフルポストエディットの作業内容、品質、そしてポストエディターに求められる能力が記されています。

ISO 18587のイントロダクションでは、「人手翻訳に匹敵する機械翻訳システム」はないので、翻訳の品質はポストエディットを行う人の能力にかかっている、と記されています。

また、「変化する機械翻訳システムのレートに関する包括的な国際標準を設けるのは非現実的」とし、規定の内容を次の2点にしぼっています

■ポストエディットのプロセスと仕上がり

■ポストエディターに必要な技量や資格

 

ここでいうポストエディットは、「フルエディット」を指しています。フルエディットは、人間の翻訳者による翻訳と同じレベルです。専門用語を守ること、表記や書式の適切さ、といった点が求められます。

ただ、ISO 17100とは異なり、セルフチェックとバイリンガルチェックは求めらていません。ということは、ISO 17100に準拠した翻訳のほうが、最終的に高い品質レベルが求められている、とも解釈できます。

なお、ライトエディット、ポストエディターのトレーニング、プレエディットについては、付帯資料という形で掲載されています。

 

 

ポストエディター(ポストエディットを行う人) の能力については、ISO 17100で設定された翻訳者に求められる要求に加え、機械翻訳エンジンや翻訳支援ツールに関する知識、さらにエラーが起こった時、定められたとおりに修正を行う能力、といった技能も求められています。

翻訳だけではなく、翻訳技術に関する技術や知識がないといけない、ということですね。今後、こういった要件を満たすポストエディター向けのトレーニングをどのようにしていくのか、ひとつの課題となりそうですね。

また、ポストエディットで行う修正点はガイドラインとしてまとめる必要があります。ガイドラインがないと、「どこまで修正するのか」が明確にならず、ポストエディター(作業者)によって、品質にばらつきが出てきてしまいますよね。

なお、ISO 18587には、ISO 17100 のように認証機関はありません。認証をとって、品質をアピールするというよりは、自社の翻訳の品質・工数を安定させるために活用できる規格です。

 

冊子の購入は、下記ページから可能です。英語版が11,404円、日本語が20,520円 です。

引用元:日本規格協会 【規格・書籍・物品】/ ISO 18587:2017

 

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「お金を払わず、ちょっとだけ、見てみたい。」という場合には、オリジナルの英語のサイトから、最初の部分だけ、PDFプレビューを無料で見ることができます。リンク先で「Preview」ボタンを押してみてください。

まとめ:翻訳とポストエディットのISO

翻訳の国際規格ISO 17100 は、翻訳のフロー・翻訳者の要件などを定義しています。

認証を受けるには厳しい規定を満たしている必要があり、現在35の組織が認証を受けています。

ISO 18587 は機械翻訳後のポストエディットに関する規格です。フルエディットを前提に、ポストエディットのフローと、ポストエディターについて、定義しています。ISO 18587 には認証がありません。

技術の革新と共に、激しい変化が求められている翻訳の世界。

玉石混合いりまじった状態になりがちですが、こういった規格ができたことで、品質に関する合意ができ、良いサービスを提供している会社が評価されていってほしいですね。

 

■ISO 17100 については JTFジャーナル(日本翻訳ジャーナル)No.280 で分かりやすく特集されています。JTFジャーナル誌は、現在無料で会員登録をすると購読できます。