機械翻訳ポストエディット単価の相場:従来の翻訳料金との比較

ポストエディットの料金

「ポストエディット」は、機械翻訳の広がりとともに、最近需要が増えてきた作業です。

「どれぐらいだろう」と知りたくても、ほとんどの翻訳会社は、ポストエディットの単価をウェブ上に公表していません。

単価を高く書くとお客さんがひいちゃうかもしれず、低く書けば、おかしな文書もその単価で受けるリスクが生じる。むずかしいところだとは思いますが、やっぱり、「ポストエディットの相場」気になるところです。

今回は、従来の翻訳料金と比較しながら、ポストエディットの料金の相場について見てみようと思います。まずは通常の翻訳料金の計算方法から、説明していきます。

通常の翻訳料金の計算① 訳文から算出

実は、翻訳料金の提示の仕方は2種類あります。

1つ目は「1枚(1ページ)6000円」といった書かれ方です。これは翻訳した成果物を基にした計算方法です。

日本語→英語の場合には、翻訳後のワード数180ワード~200ワードを1枚として料金を計算します。英語→日本語の場合には、翻訳後の文字数400文字を1枚として、料金を計算します。

たとえば、【英語→日本語、1枚5000円】の翻訳料金の場合、翻訳した文字数が2000文字になるとすると、翻訳料金は、次のようになります。

2000文字÷400文字=5枚

5枚×5000円=25000円

 

ちょっとわかりにくいですよね。私は以前翻訳会社にいましたが、最初にこの計算方法を知った時には、頭がこんがらがっちゃいました^^;

 

実際には最初の英語の原稿の段階で、これぐらいの文字数になる、と計算して見積もりをだします。

ほとんどの翻訳会社は見積もりの金額内で作業をすすめてくれます。なので見積料金から大きく変わる、といったことは あまりないと思います。

そんなことになったら2度と依頼されなくなってしまうので、当然といえば当然ですね。

通常の翻訳料金の計算② 原文から算出

この昔からある計算方法に対して、しばらく前から、原文のワード数、または文字数をベースに翻訳料金を算出する方法が増えています。

この計算方法は、翻訳メモリ(過去の翻訳のデータベース)を活用して翻訳をすすめる方法が広まってきたため、使われるようになっていきました。

最初からスッキリと計算できるので、以前の翻訳後の文字数をベースとするより、わかりやすい方法です。

翻訳を依頼する側としては、今回の原稿のなかで、翻訳メモリを活用できる部分があれば、その分 翻訳料金を安くしてほしいですよね。なので翻訳会社では、通常、見積もり時に今回の原稿が どれぐらい翻訳メモリと一致しているか、解析をかけます。

この解析結果をもとに、翻訳料金を算出します。

この「解析」作業には、翻訳支援ツールを使って行います。たとえば、次のような形で翻訳メモリとの一致率が「解析結果」として、算出されます。

翻訳支援ツールを使用した解析結果

 

翻訳メモリを使うことができる部分は、いちから翻訳するより労力が少なくてすむはずです。そこで、翻訳メモリとの一致に応じて、支払う率を変えます。

具体的には、次のような課金率を使用します。

一致率課金率
繰り返し(同語)5%
101%一致5%
100%一致5%
95-99%一致10%
85-94%一致30%
75-84%一致60%
50-74%一致100%
0-49%一致100%

*こちらは例です。実際には案件や会社によって課金率のレンジ・率はことなります。

 

解析結果にこの課金率をかけあわせて、翻訳の文字数を算出します。

【課金率をつかった翻訳文字数の計算方法】

繰り返し:0文字×5%=0文字

101%一致:0文字×5%=0文字

100%一致:39文字×5%=2文字

95-99%一致:47文字×10%=5文字

85-94%一致:46文字×30%=14文字

75-84%一致:33文字×60%=20文字

50-74%一致:74文字×100%=74文字

0-49%一致:221文字×100%=221文字

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合計文字数 : 335文字

*小数点以下を四捨五入として計算

 

この文字数をもとに、翻訳の単価が1ワード10円であれば、次のような計算式で翻訳料金を算出します。

335文字×10円=3350円

 

この計算方法が導入される前は、繰り返し箇所や似ている箇所でも、通常と同じ翻訳料金が支払われていました。

ですが、この方法が広まったことで、繰り返しや似ている部分の翻訳料金は安くなりました。つまり、翻訳料金は実質的に下がっている、といえます。

現在の翻訳料金の目安

翻訳料金の計算方法についてみてきたところで、つぎに、現在の翻訳単価の相場について、みていきます。

翻訳料金の単価の目安は、業界団体である日本翻訳連盟(JTF)のサイトに「クライアント企業が翻訳会社に初めて翻訳を依頼される場合の翻訳料金(翻訳発注価格)の目安」が掲載されています。

 

【英日・日英翻訳の場合(単位:英日の場合は原文の英語 1 ワードあたり、日英は和文原稿の1文字あたりの価格)】

文書の種類/分野 翻訳料金(英日) 翻訳料金(日英)
コンピューターマニュアル 28円 20円
一般科学・工業技術 28円 21円
金融 30円 25円
経営管理・財務・契約書 30円 25円
医学・医療・薬学 35円 30円
特許明細書 26円 30円

※上記は、一般的な実例の平均値を分野ごとに示した翻訳料金の目安です。

※専門性、難易度、翻訳量、納期、原文・訳文のデータフォーマットや処理の種類と程度、そして品質レベルなどによって大幅に異なります。また当然ですが、翻訳会社など受注側の価格方針などによっても差が生じます

ー引用元:日本翻訳連盟サイト”翻訳料金(クライアント企業の翻訳発注価格)の目安”

本記事での説明をわかりやすくするため、タイトル表記一部変更しています。

 

上記は翻訳会社が顧客企業に対して提示する金額の目安です。翻訳会社から仕事を請け負う翻訳者の翻訳の単価は、当然、もっと安くなります。

かつては1ワード20円以上であったこともありますが、2000年代にはいって1ワード15円をきるようになりました。最近では、IT関連の文書で1ワード8円~10円、あるいはもっと安いこともあるようです。

もちろん分野や品質のレベルによって、もっと高い単価のケースもあります。ただ技術の進化とともに、翻訳単価は確実に下がり続けていると言われています。

従来の翻訳料金とポストエディット料金の比較

次に、ポストエディットの料金をみていきます。

ポストエディットの料金を明記している翻訳会社はまだあまり多くないのですが、公表している会社では、下記のような料金が提示されていました。

 

例1:ビジネス文書をメインにする翻訳会社1文字7円~12円
(通常翻訳は最も簡易的なレベルで10円~15円)

 

例2:特許文書を専門とする翻訳会社1文字10円
1ワード18円

 

例3:マーケティング・技術文書を得意とする翻訳会社1ワード12~20円

 

こちらはクライアント企業向けの翻訳料金です。先ほどの日本翻訳連盟の翻訳料金表と比較してみてみると、だいぶ安いですよね。

 

では、ポストエディットを行う作業者への支払い額についてはどうでしょうか。

ポストエディットに積極的なある翻訳会社の求人募集では、ポストエディット作業について、1ワード5円、といった金額が提示されていました。単純な比較となりますが、こちらも、現在の翻訳料金の相場より、大分安くなります。

ポストエディットは、文書や修正のレベルによっては、翻訳者でなくとも出来る場合があります。「英語がわかるひと」レベルです。こういった求人では、単価はさらに安く設定されているケースも見受けられました。

翻訳の単価比較の際の注意点

単価だけ見ると、ポストエディット作業は、通常の翻訳単価より安くなります。

ポストエディットの単価の安さから、翻訳者に仕事を断られてしまう場合もあるようです。

ただ、注意してもらいたい点があります。

それは、ポストエディットは品質レベルがあり、この点を無視して人手翻訳の単価と単純比較できない、という点です。

人手翻訳については、常に良いレベルが期待されます。ですがポストエディットには用途によって品質レベルがあります。

最も低いレベルはライトエディットやラピッドエディットと呼ばれます。最も品質レベルが高いものはフルエディットと呼ばれ、通常、人手翻訳と同じレベルが求められます。会社によって、さらに細かく品質レベルを分けている場合もあります。

ポストエディットが人手翻訳と比べてどれほど安くなるかを比較するときは、どのポストエディットのレベルと比較するかを明確にする必要があります。

まとめ:ポストエディットの相場について

今回は、従来の翻訳料金とポストエディットの料金を比較しました。

翻訳者へ支払う翻訳単価は、かつて1ワード20円を超えていましたが、どんどん下がり続けています。原文の文字数・ワード数で換算すると、翻訳料金は1ワード8円~10円ほどです。

ポストエディットについては、その単価より安く求人がされています。クライアント企業から翻訳会社への金額も、ポストエディットの単価は、翻訳の単価よりも低く設定されています。

 

ただ、ポストエディットには、いくつかの品質レベルがあります。この品質レベルを明確にしないと、単純に人手翻訳とのコスト比較はできません。

とはいっても、機械翻訳導入により、翻訳の単価が下がっていくのは、確実かと予想されます。

 

かつて翻訳支援ツールが導入された際、「くりかえし」や「似ている箇所」を流用できるから、その部分についての支払いを安くする、といった料金体系になりました。一言でいえば値下げなのですが、ただ、技術革新によって作業が楽になった分を料金に反映させる、というのは理にかなっています。

今回も機械翻訳の精度の向上、という技術革新が起こり、これによって翻訳を効率化することが可能になりました。その分が料金に反映されるのは、ある意味、避けられないことでもあります。

あまりに理不尽な単価は淘汰されると思いますが、ただ、全体的にはポストエディットで翻訳料金は下がっていくと予想されています。

では翻訳料金は軒並みすべて下がっていくのか?といえば、そう単純にもならず、「機械翻訳ではやっぱり無理」という部分は残るかと思うのです。そういった意味では、翻訳の単価は全体的には下がるものの、二極化していくかもしれませんね。